「感覚統合って、どこで受けられますか?」私たちがオンラインレッスンをしていると、保護者様からこんなメッセージをいただくことがあります。「感覚統合っていうのを受けさせてみたいんですが、どこに行けばいいですか?」この言葉をいただくたびに、すこしだけ胸がじんとします。それだけお子さんのことを真剣に考えて、調べて、「何かしてあげたい」という気持ちがあふれているから。でも正直にいうと、このとき私の中には、ふたつの気持ちが同時に生まれます。ひとつは「その熱意、きっとお子様の力になる」という気持ち。 もうひとつは「感覚統合、実はもうおうちでやってたりしますよ」という気持ち。保護者様とのやり取り、感覚統合トレーニングの例レッスンで、こんなことがありました。6歳のRくん。朝のお着替えでボタンをとめるのがどうしても苦手で、毎朝お母さんが手伝っているとのこと。動作を見させてもらうと、ボタンを握ることは出来る、対側の手で穴が捻じれないように固定もできるが、上手く穴に入らない、すぐに「もうやだ!」と投げ出してしまいます。お母さんは画面越しに、少し申し訳なさそうに言いました。「練習が足りないだけですかね……もっとやらせればいいんでしょうか。」私はすぐに「お母さん、練習量も大切ですが、Rくんは今、ボタンを通す練習が嫌になっているので、別の方法で練習をしましょう」とお答えしました。Rくんの場合、練習量の問題ではない可能性があります。「自分のボタンを握った指先がどこにあるか」「指先にはどのくらい力を入れているか」「指先をコントロールして穴に入れるにはどうしたらよいか」を感じ取るセンサーが、まだ発達の途中にある。それが、「ボタンをつける」という細かい動作への困難さにつながっているのです。感覚統合療法の視点では、このような「子どもの目にみえる困りごと」の背景を感覚の発達から丁寧に読み解いていくことが重要を分析することが重視されています。※¹。実はこれ、「固有感覚」がポイントなんですここで一つだけ、専門的な言葉を紹介させてください。「固有感覚(こゆうかんかく)」筋肉や関節が「今どのくらい力が入っているか」「手がどこにあるか」を脳に伝えるセンサーのことです。大人は、目で見なくてもポケットに手を入れることができる。手を入れてみると、スマホを探せる。この円滑な一例の流れは、この感覚が寄与しています。感覚統合理論では、この「固有感覚」と「前庭感覚(バランス感覚)」「触覚(しょっかく)」の3つが、子どもの発達の土台になると考えられています※¹。感覚統合療法は、A. Jean Ayres 博士(1920-1988)という作業療法士が、神経科学・教育・心理学を幅広く学んだうえで体系化した治療理論です※²。日本には1970年代に紹介され、1981年に日本感覚統合障害研究会が発足して以来、作業療法士を中心に40年以上にわたって学び継がれてきました。専門家は、遊具を使いながら「その子にちょうどいいチャレンジ」を一緒に組み立てていきます。熟達したセラピストは、子どもの動きや表情をよく観察しながら、「今この子に必要なことは何か」を瞬時に考え、かかわり方を変えていく。そのやり取りの中にこそ、子どもの成長を支援する本質があります。おうちで「感覚統合療法」をそのまま再現はしなくていいと感じます。でも、その考え方を日常の遊びに「活かす」ことは、どのご家庭でもできて、大切です。運動が苦手な子どものためのオンライン運動指導教室「きそスポ」とはまずは、おうちで「ぎゅっと押す遊び」をやってみてください今日から試してほしいことがあります。手のひらを使って、押す、引っ張る、体重をかける両手で押す「手押し相撲」、ボールを引っ張りあう、床に手をついてカニさん歩きをする。こういった「押す・引っ張る・体重をかける」動きが、固有感覚への刺激になります。特別な道具も施設も、まずは必要ありません。Rくんの場合は、ボタンを握れるが、穴に通すのが難しいことから、貯金箱に10円、100円玉を入れる練習はどうだろうと考えました。お母さんにも同じことをお伝えしたところ、翌週こう教えてくれました。「服を着る練習は嫌がったのに、貯金箱に10円玉を入れる練習はやってくれています。」「入る感覚は楽しいようで、笑ってました!」その翌月、Rくんのボタンが少しずつとめられるようになってきました。「できた!」の瞬間は、ある日突然やってきます。それまでの小さな積み重ねが、ある日パチンとつながる感じ。お母さんが毎日一緒に笑いながら遊んでくれたその時間が、Rくんの感覚の土台を少しずつ育てていたのだと思います。運動が苦手な子どものためのオンライン運動指導教室「きそスポ」とは↓こちらのブログ記事でも感覚統合療法に触れています。https://kisospo.com/posts/dcd参考文献・資料※1 加藤寿宏・他:感覚統合理論.OTジャーナル,52(8):846-851,2024※2 土田玲子:日本における感覚統合の歴史を振り返る.OTジャーナル,58(6):464‒469,2024