「うちの子、でんぐり返しがまだできないけど大丈夫かな……」「教えようとしても、どうやって教えたらいいか分からない……」「もしかして、発達に何か問題があるのかな……」そんな不安を感じている親御さんも多いのではないでしょうか。実際に私たちのもとへも、「回れるけど背中から落ちてしまう」「最後、起き上がるところがどうしてもできない」「毎日練習しているのに変わらない」という声がよく届きます。「まわりの子は上手にでんぐり返しができているのに、うちの子だけ……」と焦ってしまう気持ち、よくわかります。でんぐり返しは、一見シンプルな動きに見えますが、首や体を丸める・手でちゃんと支える・回転する・最後には起き上がるという複数の動きを組み合わせた、意外と難しい運動です。苦手な原因は、首の使い方・手のつき方・怖さなど、お子さんによってさまざまです。原因さえ分かれば、練習の糸口は必ず見つかります。【この記事を読むと分かること】でんぐり返しはいつからさせるべきか。一般的な年齢の目安でんぐり返しができない、よくある5つの原因自宅でできる段階的な練習ステップ無理に練習させない方がいいサイン練習してもうまくいかない時に頼れる場所私たちは理学療法士として、多くのお子さんの運動発達をサポートしてきました。その中で強く感じるのは、「何度も繰り返し練習させること」よりも、「その子がどこでつまずいているかを知り、合った方法で関わること」が、上達への一番の近道だということです。この記事では、でんぐり返しができない原因と自宅でできる練習ステップを理学療法士の視点から分かりやすく解説します。年齢別の目安から、自宅での練習方法まで、親御さんが本当に知りたいことをまとめました。焦らず、お子さんのペースに合わせて、一緒に見ていきましょう。理学療法士による「無料のマンツーマンレッスン」1. でんぐり返し(前転)とは? いつからできるようになるのが目安?でんぐり返し(前転)は、頭を体の前につき、背中を丸めながら前方へ回転する運動です。一見すると「ゴロンと転がるだけ」の簡単な動きに見えますが、実際にはしゃがむ・手をつく・あごを引く・体を丸める・回転する・立ち上がるという複数の動作を連続して行う運動です。まずは、「でんぐり返しっていつ頃できるようになるものなの?」 という、多くの親御さんが気になるポイントから整理していきます。一般的な年齢の目安幼児体育や保育現場では、4〜5歳頃にかけてでんぐり返しができるようになる子が増えてくると言われることが多いようです。ただし、この数字はあくまで「よく見られる傾向」であり、すべての子に当てはまる基準ではありません。経験的には、3歳でスムーズにできる子もいれば、6歳近くになっても苦戦している子もいて、出来るまでの年齢は幅が広いです。運動経験の量、体格、性格(慎重なタイプか活発なタイプか)など、いろいろな要素が絡み合って「できるようになる時期」は変わってきます。年齢発達の目安2〜3歳前後に転がる遊びや、マット遊びを楽しむ時期3〜4歳補助があれば前転に挑戦できる子が増えてくる4〜5歳一人で前転ができる子が多くなる5〜6歳起き上がりまでスムーズにできる子が増える※あくまで発達の目安であり、大きな個人差があります。「お友達はできるのに、うちの子はまだ……」そう感じると、不安になりますよね。私たちのところにも、そうした不安を抱えて相談にいらっしゃる親御さんは少なくありません。ですが、目安の年齢より遅くにできるようになることは、決して珍しいことではありません。でんぐり返しに必要な「体を丸める感覚」「逆さまになる感覚」「腕で体を支える力」は、それぞれ獲得するタイミングが子どもによって異なるためです。たとえば歩き始めや言葉が出る時期に個人差があるのと同じように、運動面の発達にも個人差があると考えられています。「うちの子の場合はどうなんだろう?」と気になる方は、この後の章でよくある原因を一緒にみていきましょう。2. でんぐり返しができない。よくある5つの原因「でんぐり返しができない…なんでだろう?」その疑問、もう少し掘り下げてみましょう。原因は一つではなく、お子さんによってつまずいているポイントが違います。前転動作には「しゃがみ・バランス」「手で支える」「目の動き」「動きのイメージ」という4段階の要素が必要であると提唱されています※¹。どこか一つでも苦手な部分があると、最後までスムーズに回ることが難しくなります。ここでは知見に加えて、現場でよく見られる5つのパターンをご紹介するので、「うちの子はどこかな?」という視点で読んでみてください。① あごを引けず、体を丸められないでんぐり返しが苦手なお子さんに最も多く見られるのが、あごを引いて体を丸める姿勢が作れないパターンです。本来のでんぐり返しでは、あごを胸に近づけることで背中全体が丸くなり、後頭部から背中へとスムーズに回転していきます。しかし首が伸びたまま頭のてっぺんを床についてしまうと、背中を強く打ったりしてしまいます。一度「痛い」「怖い」という経験をすると、無意識に体を丸めることを避けるようになり、「痛いから丸まれない」「丸まれないからまた痛い」という悪循環に陥ってしまうことが多いです。これは筋力不足というより、体を丸める姿勢や動きのコツが、まだ身についていない段階だと捉えることができます。② 手で体を支える力やタイミングが身についていない①が「頭の使い方」の話だとすると、こちらは「手の使い方」の話です。でんぐり返しでは「回る」ことばかりに目が向きがちですが、実は回り始める前に、手で体を支えることがとても重要な役割を持っています。両手でしっかり床を押すことで、頭や首への衝撃を和らげ、安全に回転へ移ることができます。しかし、手をつく位置が体から遠すぎる手をつく前に頭から床についてしまう肘が曲がってしまい、体を支えきれないといった状態だと、回転が不安定になりやすくなります。これは腕の力だけの問題ではなく、「いつ・どこに・どのくらいの力を入れるか」という体の使い方が、まだ十分に身についていないことも関係していると考えられます。③ 回った後に起き上がれない(重心移動が苦手)「回ることはできるけれど、最後に立ち上がれない」というお子さんも多いです。でんぐり返しでは、回転した勢いを利用して重心を足の方へ移動させながら立ち上がる必要があります。この重心移動がうまくいかないと、回転後にそのまま座り込んでしまうことになります。お腹の筋力だけが弱いというよりも、体の姿勢を切り替えながらバランスを保つ力が、まだ発達の途中であることが多いように感じます。なお、前転動作の観察評価として「あごを引いて頭を入れられるか」「背中を丸めたまま転がれるか」「転がりの勢いで起き上がれるか」という3点が重要な評価観点としても示されています※²。④ 逆さまになることへの怖さや慣れの不足「頭が下になる」「景色がぐるっと回る」という感覚そのものに、不安や抵抗を感じるお子さんもいます。体の傾きや回転を感じ取る「前庭感覚」は、空間内での体の動きに関する感覚情報を処理するシステムです。この前庭感覚への過反応が、動きや逆さまの姿勢への恐怖として現れることがあると考えられています※³。こうした感覚は、遊びの中でいろいろな動きを経験することで、少しずつ育っていくものです。また、以前のでんぐり返しで頭や背中をぶつけた経験があると、「また痛いかもしれない」という記憶から、体が無意識に動きを止めてしまうこともあるようです。無理に練習を続けると、かえって苦手意識が強くなってしまう可能性もあるため、「怖い」と感じている気持ちにまず寄り添いながら、少しずつ成功体験を積み重ねていくことが大切だと私たちは考えています。⑤ 運動経験がまだ十分ではない最後にお伝えしたいのが、運動経験そのものの違いです。でんぐり返しは、生まれつき自然にできるようになる動きではありません。転がる手で支えるしゃがむ、手を使わずに立ち上がるといった多様な動きを日頃から経験することで、でんぐり返しに必要な体の使い方が少しずつ身についていきます。文部科学省の「幼児期運動指針」でも、幼児期には特定の運動だけに偏らず、遊びの中でさまざまな動きを経験することが、その後の運動能力の土台になると示されています※⁴。「まだ必要な動きや感覚を、経験している途中なんだ。」私たちはそんな視点でお子さんを見守ることが、上達への第一歩になると考えています。運動が苦手な子どものためのオンライン運動指導教室「きそスポ」とは3. 自宅でできる! でんぐり返しの練習5ステップ「家でどうやって教えたらいいの?」 そんな方のために、段階を踏んだ練習の流れをご紹介します。いきなり完成形を目指すより、一つずつクリアしていく方が、結果的に上達が早くなります。練習前に、安全な環境を整えましょうフローリングは避け、毛布や厚めの布団など、体操マットになるようなものを使いましょう。周囲1〜2mのスペースを確保し、最初は必ず横で見守ってあげてください。「一緒にやってみよう」その一言だけで、お子さんの安心感は大きく変わります。ステップ① ゴロゴロ・ゆりかご遊びで回転感覚に慣れよういきなり前転をさせる前に、「回転する感覚」に慣れることが先決です。布団の上で横向きにゴロゴロ転がる仰向けで膝を抱えて前後にゆれるゆりかご遊び(体育座りをしながら背中を丸めて後ろへコロンと転がり、戻ってくる運動)この動きには、でんぐり返しに必要な「体を丸める感覚」と「回転する感覚」の両方が含まれています。「だるまさんみたいに丸くなってみよう!」と声をかけると自然と取り組めます。怖がりが強いお子さんも、この遊びからであれば安心して始められることが多いです。神経は適切な同じ経験・刺激を繰り返すことで適応し、徐々に変化していくことが知られています※⁵。「回転する感覚が怖い」というお子さんも、ゆりかご遊びなどを通じて少しずつその感覚に慣れていくことができると考えられています。ステップ② あごを引いて体を丸める姿勢を覚えようでんぐり返しが苦手なお子さんの多くは、体を丸める姿勢がまだ身についていません。そんな時は「頭を下げて」ではなく、「おへそを見てみよう!」と声をかけてみてください。自然とあごが引け、背中も丸くなります。最初は回る必要はありません。丸くなったまま数秒キープできれば十分です。顎と首でタオルを挟んでキープする練習もオススメです。ステップ③ 手で体を支える感覚を身につけよう丸まる姿勢ができてきたら、手で床を支える練習を加えます。以下の遊びが自然と「腕で体重を支える感覚」を育ててくれます。クマさん歩き(上記写真を参照ください)カエルジャンプ(しゃがんだ状態から両手を前についてジャンプ)手押し車(親御さんが足を持って、手だけで前進する)「力持ちのクマさんみたい!」など、遊びながら取り組める声かけをすると、お子さんも楽しんで練習できます。ステップ④ 壁倒立で逆さまの感覚に慣れよう壁の前に手をつき、足を壁に向けてゆっくり歩かせるように上げていきます。完全な逆さまになる必要はなく、腰が頭より少し高くなる程度で十分です。この「頭が下になる感覚」に慣れることが、でんぐり返しへの恐怖心を和らげる助けになります。必ず親御さんが腰を支え、無理のない高さで行ってください。首に違和感がある場合はすぐに中止しましょう。ステップ⑤ しゃがみ位から立ち上がる練習をしようでんぐり返しの最後の「立ち上がり」には、しゃがんだ姿勢をきちんととれること、そしてそこから立ち上がれることが土台として必要です。まずはお子さんが安定してしゃがめるかを確認してみてください。しゃがみ位が難しい場合は、「うんちの姿勢をしてみよう」と声をかけると自然にしゃがめることが多いです。かかとが浮いてしまう場合は、かかとの下に薄い本や折りたたんだタオルを置くと安定しやすくなります。しゃがめるようになったら、そこから立ち上がる練習です。「おへそを前へ運ぼう」と声をかけると重心が前に移りやすく、スムーズに立ち上がりやすくなります。でんぐり返しの後に立ち上がれない場合も、まずこの「立った姿勢→しゃがむ→立つ」の動きを別で練習しておくことが、遠回りに見えて一番の近道になります。これらのステップを踏んでも「同じところで止まってしまう」「怖がりが強くて前に進めない」という場合は、次の章も読んでみてください。▼こちらの記事もあわせてオススメ【後転のコツ】小学生で後転な苦手な子どもへの上手な教え方と練習法【なわとびが上手にとべない!】小学生のためのなわとび練習のコツと「3日で変わる教え方」小学生からのコーディネーショントレーニング。効果的なメニューで子どもの運動能力を向上させる方法4. こんな時は無理に練習させなくてOK「途中で泣いてしまった…」「やりたくない! と言われてしまった…」そんな経験をした親御さんも多いのではないでしょうか。実は、痛みや恐怖心が強い状態で練習を続けると「でんぐり返し=怖い」という記憶が残り、かえって苦手意識が強くなってしまうことがあります。お子さんが安心して挑戦できることが、上達への一番の近道です。① 「怖い」「嫌だ」のサインが出たら一度お休みを以下のような様子が見られる場合は、無理に続けなくて大丈夫です。練習中や練習後に首や背中の痛みを訴える「怖い」と泣いたり、体が固まってしまう練習に誘うだけで嫌がる何度挑戦しても恐怖心が強まるばかりで、楽しめている様子がないそんな時は、3章でご紹介した「ゆりかご遊び」「くまさん歩き」などまで戻ってみてください。「今日は前転をしないよ」という選択も、決して後退ではありません。② 専門家に相談した方がよい目安以下のような場合は、自己判断だけで進めず、一度専門家に相談してみることをおすすめします。数か月練習を続けても、まったく変化が見られない体を丸める姿勢が難しく、寝返りやしゃがむ動作にも強い苦手さがある逆さまへの恐怖が非常に強く、少し体勢を変えるだけでも強く嫌がるマットや床に手をつくこと自体を極端に嫌がる練習中・練習後の痛みが続くこれらは必ずしも病気や発達上の問題を意味するものではありません。まずはかかりつけの小児科医に相談し、必要に応じて理学療法士や作業療法士などの専門職につないでもらうのも一つの方法です。「相談するほどのことかな…」と迷う必要はありません。どこに相談すればいいか分からない場合は、次の章も参考にしてみてください。5. 練習してもうまくいかない……そんな時は専門家に相談するのも一つの方法「家でも頑張って練習しているのに、なかなか変わらない…」「動画を見ながら教えているけど、これで合っているのかな?」 そんな不安を感じることもありますよね。頑張っているのに上達しない場合、「練習不足」ではなく「その子に必要な練習が違う」というケースも考えられます。おうちの練習だけでは気づきにくいことがありますご家庭での練習には、お子さんのペースで取り組めるという大きなメリットがあります。一方で、あごを引く、手をつく位置、重心移動の仕方、「怖い」と感じている理由など、どこでつまずいているかを親御さんだけで見極めるのは簡単ではありません。「毎日練習しているのに変わらない」「うちの子に合っているか分からない」という声は、私たちのもとへもよく届きます。きそスポの理学療法士は「できない理由」を一緒に探します理学療法士は「前転ができた・できなかった」という結果だけを見ているわけではありません。どの場面で動きが止まるのか、怖さや緊張が動きに影響していないか、日常の姿勢や歩き方との関連はあるか。こうした視点でお子さんの体の使い方を観察することで、「なぜできないのか」の背景が見えてきます。原因が分かれば、その子に合った練習の糸口も見つかりやすくなります。「病院へ行くほどではないけれど、少し気になる。」「一度専門家に見てもらって、家での練習方法を知りたい。」そのような方も、どうぞお気軽にご相談ください。運動が苦手な子どものためのオンライン運動指導教室「きそスポ」とは6. 「なにが原因かわからない……」そんな時はオンライン無料体験で一緒に見つけましょう「記事の練習を試してみたけど、なかなかうまくいかない…」「うちの子の場合、何が原因なのか分からない」そんな方に向けて、きそスポではオンラインの無料体験をご用意しています。まずはお子さんの動きを一緒に見るところから始めてみませんか。きそスポでは、お子さんの動きを遊びの中で丁寧に観察しますきそスポは、理学療法士が運営する子どもの運動教室です。遊びや運動を通して、どこで動きが止まっているか、体のどの部分が使いにくいか、怖さや緊張が動きに影響していないかを丁寧に確認します。その上で、一人ひとりの発達段階や性格、体の使い方に合わせた練習方法をご提案しています。無料体験でわかることお子さんの体の使い方や動きの特徴でんぐり返しでつまずいているポイント今日からご家庭で取り組める練習方法や遊び保護者の方の疑問や不安へのアドバイス「家では何を意識すればいいの?」 その疑問が解消されるだけでも、ご家庭での関わり方は大きく変わります。体験の流れ・よくある質問【体験の流れ】お申し込みフォームからご予約ご都合のよい日時を選択、体験会で実施したい内容の打ち合わせオンラインでレッスン、お子さんの動きを確認理学療法士がお子さんに合った練習方法をご提案所要時間は約60分。動きやすい服装と2畳ほどのスペースをご用意ください。Q. 運動が苦手な子でも参加できますか?もちろんです。「苦手だから相談したい」というお子さんのご参加が多く、無理なく楽しめる内容から始めています。Q. でんぐり返し以外の相談もできますか?はい。走り方や縄跳び、跳び箱、鉄棒など、運動全般についてご相談いただけます。「できた!」につながる第一歩を、一緒に見つけましょうお子さんに合った練習方法が見つかり、「できた!」という成功体験が積み重なると、自信が生まれ、運動を楽しめるようになる。そんなお子さんをたくさん見てきました。一人で悩み続けなくて大丈夫です。まずはお子さんの動きを一緒に見ながら、今に合った練習方法を見つけてみませんか。\オンライン無料体験のお申し込みはこちら/オンライン運動指導教室「きそスポ」参考・引用文献1. 笹田哲:前転が上手にできない!チャイルドヘルス,Vol.22 No.8,62-64,2019、論文を見る2. 加藤謙一,他:小学生における前転および後転動作の観察評価の妥当性,発育発達研究,第64号,1-10,20143. Guardado KE, et al. Sensory Integration. [Updated 2023 Jul 31]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-. Available from: 内容を見る4. 出典:文部科学省「幼児期運動指針」、内容を見る5. Lane SJ, et al. Neural Foundations of Ayres Sensory Integration®. Brain Sciences. 2019;9(7):153.論文を見る