ウチの子の体幹が弱いのは、発達障害だから? 運動教室の現場で見えてきたこと運動教室きそスポの代表は、リハビリテーションの専門職である理学療法士です。これまで、発達障害のあるお子さんを担当する機会も多くありました。ある日、保護者の方からこんな話を聞きました。「うちの子、どうも体幹の緊張が弱いみたいなんです」発達障害の特性として、専門機関でそう説明を受けたということです。体幹の緊張が弱いことが、発達障害の特性のひとつとして語られることがあります。へえ、そうなんだ。理学療法士としても現場で感じていたことと重なる部分はあったけど、こうして言葉にされると、また違う角度から考えさせられます。ただ、それを「発達障害=体幹が弱い」とひとくくりにしてしまうのは、ちょっと違う気がしてなりません。「発達障害=体幹が弱い」は、本当なのか調べてみると、発達障害のなかにも体幹との関係の強さに差があることが分かってきました。一番はっきりしているのは、DCD(発達性協調運動障害)です。運動の不器用さや、体を思うように動かせない協調運動の困難を特徴とする診断名で、小学生の約6%に見られるとされています。クラスに1〜2人はいる計算で、決して珍しいものではありません。DCDのある子どもについては、体を支える筋肉の働くタイミング(体幹)そのものに違いがあるという研究があります※¹。また、バランスを崩したときに使う筋肉の反応が遅れたり、姿勢を保つための筋肉の準備がうまく整わなかったりすることも報告されています※²。ASD(自閉スペクトラム症)についても、体幹との関係を示す研究は複数あります。低緊張(筋肉の張りの弱さ)が見られる子が一定数いるという報告に加えて、体幹を含む筋力そのものが定型発達の子どもと比べて弱い傾向にあるという研究もあります※³。割合や程度には研究によって幅がありますが、関係性自体は比較的はっきりしてきている印象です。一方、ADHD(注意欠陥多動性障害)については、正直なところまだよく分かっていません。ADHDのある子どもは、バランスや姿勢保持を含む運動発達全体において、定型発達の子どもと比べて明確な遅れが見られるという研究があります※⁴。ただ、その遅れが体幹そのものの弱さから来ているのか、注意や衝動性といったADHD特有の特性が運動の習得や実行に影響しているのかは、まだはっきりと切り分けられていません。加えて、ADHDはDCDと合併していることが多く、その場合は体幹の弱さが見られることもあります。合併によるものなのか、ADHD単体の特性なのかを区別するのも簡単ではありません。現場での実感としても「ADHDだから体幹が弱い」とまでは言い切れないかな、というのが正直なところです。▼こちらの記事もあわせてオススメDCDとは?子どもの「発達性協調運動障害」判定方法とトレーニング【理学療法士解説】「言い切れない」ことを、誠実に伝えたい体幹の弱さがある子は、発達障害のなかでも一部にすぎません。逆に、発達障害がなくても体幹が弱い子はいますし、体幹が弱いからといって発達障害があるとは限りません。「発達障害=体幹が弱い」、「体幹が弱い=発達障害かも」どちらの方向の決めつけも、教室としてはしたくないと考えています。DCDとASDについては体幹・姿勢制御との関係が比較的はっきり示されている一方、ADHD単体での関係はまだ研究が追いついていない、ということは知っておいてもいいと思っています。こういう情報の精度にこだわるのは、代表が大学院で修士号を取得し、現在も客員研究員として研究の現場にも関わっており、論文の読み方や統計の扱いに日頃から触れているからかもしれません。現場の実感だけで「きっとこうだろう」と決めつけず、根拠があるかどうかを一段確かめる。そのひと手間が、教室として発信する情報の土台になっています。教室で見えてくる、発達特性や体の困りごとのサイン評価といっても、教室や家庭でできることは、専門的な検査ではありません。日常の場面で見えてくるサインを、いくつか挙げてみます。椅子に座っているとき、すぐに体が傾いたり、机に寄りかかったりする。立っているとき、何かにつかまっていないと不安定に見える。階段の昇り降りやジャンプといった動きが、年齢に比べてぎこちなく見える。同じ姿勢を続けることをすぐに嫌がり、頻繁に姿勢を変えようとする。動き出しのタイミングでバランスを崩しやすい子もいます。歩き出す、走り出す、立ち上がるといった、体勢が切り替わる瞬間にふらつきが出やすい。動いている最中も、何かにつかまろうとしたり、バランスが安定しなかったりする様子が見られることがあります。また、ほかの子と同じくらい動いているはずなのに、明らかに疲れるのが早い子もいます。少し体を動かしただけで息が上がる、休憩を頻繁に欲しがる。これも、姿勢を保つこと自体にエネルギーを多く使っている可能性のあるサインです。意外に思われるかもしれませんが、ボールをキャッチできない、うまく蹴れないといった様子も、体幹と関係していることがあります。手や足を思い通りに動かすには、その土台となる体幹がしっかり安定している必要があるからです。体幹がぐらついていると、ボールが来たタイミングで姿勢を保つことに気を取られてしまい、手や足を狙い通りに動かす余裕がなくなってしまう。手先・足先の不器用さに見える動きも、根っこをたどると体幹の安定性に行き着くことがあるのです。どれも「だらしない」「やる気がない」と片付けられがちな場面です。けれど、これらは体の使い方そのものに困りごとがあるサインかもしれません。(※ご注意:発達障害の診断は医師が行います。このブログの内容は、診断・医療行為に代わるものではありません)子どもの運動教室、きそスポでの関わり方診断は専門機関に委ねるとして、教室でできることは何でしょうか。体幹そのものを「鍛える」というより、その子が安心して動ける環境の中で、少しずつ体の使い方に慣れていく、という感覚でメニューを組んでいます。トレーニングや遊びそのものが評価の場でもあり、レッスン時の様子を見ながら、その子がどんな動きを得意とし、どんな動きに苦手さが出るのかを見極めていきます。メニューの選び方自体は、思いつきではありません。DCDのある子どもに姿勢筋の働き方の違いがある、という研究を踏まえつつ、目の前のその子が実際にどう動くかを丁寧に見て、両方を重ね合わせながらメニューを組み立てています。経験則と根拠、その両方から狙いを絞れることが、遠回りせずに変化を感じてもらえる理由のひとつだと思っています。無理に「できないことをやらせる」のではなく、その子が安心して取り組める動きから始める。体幹が少し安定すると、表情が変わる子がいます。肩の力が抜けて、ふっと楽そうな顔になる瞬間があります。「できないからやらせる」のではなく「楽になる感覚を一緒に見つける」。多様な考え方を持つことが大切、最近よく思います。▼こちらの記事もあわせてオススメ小学生の猫背。その原因は「腹筋の弱さ」かも? 子どもの猫背改善は体幹のトレーニングから子どもにも体幹トレーニングは必要?子どもの運動不足が心配な親が知っておきたい体幹トレーニングとはきそスポは子どもの成長を親御さんと伴走しますきそスポでは、体幹の弱さや発達の特性を「伸びしろ」として捉えています。その子がどう感じているか、どんな場面でしんどさが出ているか。親御さんからいただく日々の気づきと、リハビリテーション専門職としての知見の両方を大切にしながら、一人ひとりの状態に向き合っています。「うちの子、体幹が弱い気がする」「発達のことで気になっている」。そんな声も、ぜひ気軽に話しかけてください。きそスポの無料体験が選ばれる5つの理由お子さんの視る力・運動能力の現状を確認できます実際のレッスンを体験し、お子さんの反応を見られます自宅、オンラインで完結するので、送迎不要・時間も選べます参加後の無理な勧誘は一切ありません親御さんの疑問にその場でお答えしますまずは気軽に、無料体験からお試しください。\オンライン無料体験のお申し込みはこちら/ オンライン運動指導教室「きそスポ」とは参考文献・資料※1 Kane K, et al. Contributions of trunk muscles to anticipatory postural control in children with and without developmental coordination disorder. Hum Mov Sci. 2012. 論文をみる※2 Fong SSM, et al. Deficits in Lower Limb Muscle Reflex Contraction Latency and Peak Force Are Associated With Impairments in Postural Control and Gross Motor Skills of Children With Developmental Coordination Disorder: A Cross-Sectional Study. Medicine (Baltimore). 2015. 論文をみる※3 Ludyga S, et al. Muscle strength and executive function in children and adolescents with autism spectrum disorder. Autism Res. 2021. 論文をみる※4 Rosa Neto F, et al. Motor development of children with attention deficit hyperactivity disorder. Rev Bras Psiquiatr. 2015. 論文をみる